[浅草ゆかりの長唄 INDEX]

都風流 昭和二十二年・四世吉住小三郎、三世杵屋六四郎作曲。
浅草界隈の前代の風物詩を歳時記風に繰り合わせたもので、作詞は久保田万太郎。

[解 説]

 昭和二十二年(1947)六月一日、長唄研精会第四百回記念の新曲として帝国劇場で初演された。作詞は久保田万太郎、作曲は四世吉住小三郎(後の吉住慈恭)と二世稀音屋淨観の合作である。

 作詞者の久保田万太郎は浅草生まれ、劇作家、演出家、小説家、俳人として活躍、東京の下町、特に浅草をこよなく愛し、その作品には浅草に生きる庶民の哀歓が描かれている。

 この曲も浅草に住まっていたという江戸時代の画家であり俳人でもあった酒井抱一の句「これよりして」に始まり、隅田川の風情から「千成市」「草市」「菊供養」「仲見世」「べったら市」「酉の市」「吉原」「歳の市」と、江戸から明治・大正頃の浅草界隈の風情を四季の移り変わりに従って情緒豊に綴られている。

 作曲の二人、小三郎、淨観は長唄研精会の創設者であり唄、三味線の名人で、明治三十六年の「四季の色音」以後数多くの合作をしているが、この「みやこ風流」は戦後作曲の長唄曲のなかでは最も広く流行している曲といってもいいだろう。それだけ名曲なのである。

 三下りから本調子、二上りと転調する。「千成市の昼の雨」「菊供養」「引けは九つ」が聞かせどころであり、新内流しの合方をはじめ短い合いの手にも古き良き時代の浅草がしのばれる曲である。

解説者『長唄研究会:植田隆之助』