[浅草ゆかりの長唄 INDEX]

蛙(かわず) 昭和三年開曲。高橋筝庵作詞、二世稀音家淨観作曲。
蛙に鳴き声で始まり、蛙にまつわる故事・逸話、昔話の蛙や縁起物の蛙の剽軽な姿を叙した洒落っ気たっぷりなケレンの長唄。

[解 説]

 高橋箒庵作詞、二世稀音屋淨観作曲。昭和三年開曲。

 蛙をカワズというのは歌語だという。多分誤りではなかろうと思う。わが国最古の文学論と言われる古今和歌集の仮名序に「花に鳴く鶯、水に住む蛙の声」とある叙述に始まって、小野道風が学問を志す契機となったという説話や、桃青松尾芭蕉の開眼の句とされる「古池や」の発句を故事として、重々しく序に据えて、序破急の構成さながらに、昔話の蛙や縁起物の蛙の剽軽な姿を叙し、浅草田圃の蛙は天敵の蛇を警戒して大葉子の葉蔭に身を隠す段切れとなる。なお、民間信仰では大葉子(車前草、オンバコとも)は半死半生の蛙も生き返らせる効能を持つと信じられてきた。

 二世淨観の業績はあらためて述べるまでもないが、高橋箒庵は新聞人・財界人である上に茶道研究家として重きをなした人物であった。今は共に故人である。

解説者『高岡市万葉歴史館館長:大久間喜一郎』